大判例

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福岡高等裁判所 昭和26年(う)3810号・昭26年(う)3811号 判決

被告人は、昭和二十五年十一月末頃福岡市住吉南新町大岡薬局附近路上においてホスピタン売買の仲介をした警察書記南部玄二郎より右ホスピタン代金一万七千円の請求をうけると「今日は二千円しか持つていないから後は二三日して持つて行く」と申向け、南部が「それでは困るから品物を返してくれ」と言うや、急に態度を変え「そんなにしつこく言えば今やつた二千円も取り返すぞ、俺を信用しとおけ、お前も警察に出よるならこんな薬を扱つてどうなるか知つとるか、俺はそんな男ではない、俺を信用しとけ」と、申し向け、若し代金の請求をやめなければ暗に同人の身体に危害を加え且つは右ホスピタン取扱の事実を公表するが如き態度を示して同人を畏怖させよつて右残代金一万五千円の支払を免がれて財産上不法の利益を得たと判示しているが、人を恐喝して債務の免脱を得又は債務の履行の延期の承諾等を得るいわゆる恐喝利得罪において犯人のした恐喝行為の結果、被害者として財産上の処分的行為をなす者は、債権者又はその財産上の利益につき正当に処分の権限若しくは地位を有する者でなければならないことは、多言を要しないから、本件において、被告人が判示恐喝行為によつて残代金一万五千円の支払を免がれて、財産上不法の利益を得たと言い得るためには判示南部玄二郎がホスピタンの売主たる債権者からその代金の支払請求権並びにその処分をなす権限を正当に委任された者であるか、若し、そうでなければ、同人に対する判示恐喝行為の結果、同人からその害悪の告知をうけてこれに畏怖した売主たる債権者をして残代金の請求権抛棄等の処分的意思表示をなさしめ或はそれを抛棄するの己むなきに至らしめた事実を確定するのでなければ、被告人が判示南部玄二郎に対する恐喝行為によつて判示残代金の支払を免がれたといい得ないのにかかわらず原判決がこの点を確定することなく「たんに売買の仲介をした南部玄二郎」に対し、判示恐喝行為を加えて残代金の支払を免がれたとだけ判示して、被告に対し、たやすく恐喝利得罪の成立を認めたのは、明らかに審理不尽の結果、理由不備の違法があるものといわねばならない。

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